カロリーゼロで食物繊維だらけの健康食品「寒天」
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寒天は冬につくられます。
しかし、使う機会が増えるのは圧倒的に夏ですよね。
水ようかんやみつ豆、ゼリーなど、夏向きのスイーツには欠かせません。
寒天の魅力はなんといっても、その透明感と清涼感ではありますが、体にもとってもいいんですよ。
Photo by フォトライブラリー
偶然がもたらした食材「寒天」
寒天はトコロテンを凍結乾燥させたものを指します。
トコロテンは珍しいお菓子として奈良時代から食べられていました。
しかし、寒天ができたのは、ずっとあとの江戸時代。
しかも、まったくの偶然からうまれた食材なんです。
時は1650年頃、小雪の舞う寒い冬のことでした。
薩摩藩主の島津氏が京都伏見の旅館に宿泊したとき、食べ残したトコロテンを戸外に捨てたところ、夜中に凍りました。
凍ったトコロテンは、昼になると溶け、乾燥します。
そしてまた夜になると凍り、昼には溶けて、乾燥する…。
これを数日繰り返したのち、トコロテンは白い乾物になりました。
ところが寒天の始まりです。
寒天を水に入れて煮ると、トコロテンよりも磯臭さが抜けて前よりおいしくなったところから、寒天はつくられるようになりました。
のちに、宇治に万福寺を創建した名僧・隠元(いんげん)禅師が試食して気に入り、「寒ざらしのトコロテン」を略して「寒天」と名づけた、といわれています。
ちなみに、伏見の旅館は美濃屋という旅館です。
出来上がるまでに2週間はかかる天然寒天
主原料はテングサという海藻で、ほかにオニクサやヒラクサ、オゴノリ、エゴノリなどの海藻を配合して利用します。
これらを煮て漉し、型に流し固めたのが寒天の原形・トコロテンで、これを屋外に並べ凍結と融解を約2週間くり返すと寒天ができます。
こうした自然の天候を利用してつくられる「天然寒天」は、昼夜の寒暖差が激しいことが重要になるため、長野や京都、兵庫などの山間部で製造されています。
しかし、最近では人工凍結によって工業的につくられる、粉末やフレーク状の
「工業寒天」が増えています。
寒天の7割以上は食物繊維でできている
寒天の成分で飛び抜けて多いのが食物繊維です。
実に全体の約74%は食物繊維といわれています。
食物繊維は腸内の「お掃除役」と言われ、腸内にある不要なものを吸着して排出する働きがあります。
また、食物繊維には、便秘や大腸ガンを防いだり、血糖値の上昇を抑える作用もあるので、糖尿病の予防にも効果的です。
原料はテングサなどの海藻類ですから、海藻由来のカルシウムや鉄分などもあります。
寒天とゼラチンは何が違うのか
どちらも液体を固める性質があり、料理やお菓子に利用されています。
しかし、決定的な違いは、寒天は植物性、ゼラチンは動物性ということ。
ゼラチンは、ウシなどの動物の骨や皮にあるコラーゲンを、熱処理して変化させたものです。
そのため、ゼラチンは寒天に比べて高カロリーな食品なんですよ。
家庭用ゼラチンのカロリーは、100gあたり344キロカロリーあるといわれています。
とはいえ、通常販売されているゼラチンは5g×10パックとかの量なので、100グラムは相当あります。
5gだと、ゼリーで5人前はできるでしょうか。
あくまでも、カロリーゼロの寒天と比較した場合、高カロリーというだけですので、ご安心を。
細菌の培地にもなる「寒天」
寒天は食べる以外にもさまざまな用途があるのをご存知ですか。
細菌などの培養に使われる培地もそのひとつ。
これにはゼラチンではなく、寒天だけが使われます。
理由は、寒天がカロリーゼロなのに対し、ゼラチンはカロリーが高めで、さらに栄養などを加えるのに不都合だということ。
もうひとつは寒天が約80度で溶けるのに対し、ゼラチンは35度ほどで溶けてしまうため、ヒトの体温に近い温度で細菌を培養してしまうと、培地が溶けてしまうからです。
ちなみに、この寒天培地という方法は、細菌学者のコッホによって改良されたといいます。
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