おせち料理に欠かせない子孫繁栄の象徴「くわい」はタンパク質が豊富
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12月が旬ということもあり、お節料理に欠かせない縁起物の野菜、くわい。
くちばし状の芽が伸びている形から「よい芽が出るよう」つまり「運が開け、幸運に恵まれますように」といった願いを込め、祝儀の料理などに使われてきました。
ホクホクした口あたりと、独特の甘味・苦味が特徴です。
食用にするのは日本と中国だけ
日本へは奈良時代に伝わったといわれ、平安中期の延長年間(923〜931)の記録に「久和為」と記されています。
正月のおせちに使われるようになったのは、安土・桃山時代から江戸時代にかけてと推定されます。
元禄11(1698)年、正月の下級武士の料理献立には、フナやコイ、コンブなどの海の幸に混じり、里の産物・くわいが加えられていました。
立身出世と子孫繁栄を願う武家社会では、たんなる旬のもの以上の意味が込められていたのでしょう。
豊臣秀吉の政策がきっかけで栽培
くわいは京野菜の1つです。
京都でくわい作りが盛んになったのは、豊臣秀吉の政策がきっかけといわれています。
安土・桃山時代の天正(てんしょう)14(1586)年、秀吉による京都改造の一環として、「御土居(おどい)」と呼ばれる土塁(どるい)が京都の四方に築かれました。
外敵から京都を守る城塞としての軍事的な目的のほかに、鴨川の氾濫はんらんに備えるための防災の意味もあったという御土居。
大きさは、全長約2834m、高さ約1.5〜3.6m、基底部の厚さは約9mにも及んだといいます。
そのため、土を掘ったあとの低地が至る所にでき、そこへ市中の下水が流れ込んだ結果、とくに京都の南部、東寺周辺は肥沃な土地になりました。
そこで、この肥沃な湿地を利用し、織物の染料・藍の栽培が盛んになり、その裏作にくわいを作るようになったのです。
タンパク質が豊富なうえ、血液をつくるビタミンB12もある
主成分はでんぷんで、野菜の中ではタンパク質も豊富です。
カリウムやビタミン類も比較的多く、根菜では珍しく、ビタミンB12がわずかばかり含まれています。
ビタミンB12は血液をつくるビタミンで、赤血球数を増やし、体力をつける働きがあります。
よいくわいの選び方
形がよく、皮の色がきれいなもの、傷がなく、軸のつけ根がしっかりして芽がすっきりと伸びているものが良品です。
水に長くつかり、ふやけた感じのものはよくありません。
縁起物なので、芽が折れていないかどうかも確かめましょう。
くわいの雑学
和名の「くわい」は「鍬芋(くわいも)」の略。
葉の形が農具の「鍬」に似ていることから名づけられました。
漢字では「慈姑」と書きます。
くわいは、親株から、タコの足のように四方八方に地下茎を伸ばし、それぞれの先端に子球をつけます。
その姿が、母親が子どもを慈(いつく)しみつつ乳を与えているように見えるため、それを姑(しゅうとめ)にたとえて、「慈姑」の字があてられるようになりました。
古書には、「一根、歳に十二子を生ず。慈姑(慈しむ母)の諸子に乳するが如し、故に以て之を名とす(ひとつの種球を植えると1年に12の子球を産み、地下で着生しているさまは、まるで母親が子に授乳しているように見える)」とあります。
また、こうした特長が「多産」を意味するとされ、子孫繁栄の象徴ともされています。
そのため、いまも婚礼の祝儀の折り詰めに、一対のくわいを並べて入れる風習が残っています。
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